←482鞍目 試合・しっかり歩け、空を見ろ
(2008.3.23 八王子・八王子乗馬倶楽部)
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この週末は、八王子乗馬倶楽部(以下HRC)で馬場の試合。本来2月上旬に開催されるはずだったのが雪で順延され、今週の開催になったものです。
2月、試合があるはずだった日の前日に跛行を出したグレイトですが、Nくん先生がほぼ毎日乗って調整してくれたおかげで、絶好調と言っていいくらいに調子を上げました。ところがわたしのほうが、先週落馬したときに手綱が指にからまり、右手中指の第一関節捻挫+軽い靱帯損傷。薬指ではなかったのがもっけの幸いとはいうものの、お箸を持つのも難儀するくらい痛い。こんなんで本当に試合に出られるんでしょうか、わたし。

試合が日曜で、馬の輸送もあるので、土曜から日の出近くの宿に宿泊。土曜日の昼休みに乗るつもりでいたのですが、先生たちの勧めで、この日はNくん先生に調整を任せて、明日の本番直前まで乗らないほうがいいということになりました。わたしの指のこともありますが、何しろわたしがグレイトに乗り切れていないので(駈歩のたびにいちいち跳ねられてちゃな)、ギリギリまで馬を作ってもらって、とにかく本番に集中するのがいいだろうという判断です。
でもやっぱりまたがるだけでもしたくなったので、Nくん先生に頼んで最後に常歩だけ乗ることにしました。またがってみると、鐙の上にすら足が届かないんですけど(笑)。鐙上げ状態で常歩を出してみると、Nくん先生が乗ったあとなので前進気勢はあるのですが、ハミを突っ張ってしまいました。これだけ前進気勢があるんだから、しっかり手綱を持っちゃえば受けるんだろうけど、手綱持たずに歩くだけって言っちゃったしなぁ。
でもやっぱり、突っ張られっぱなしがイヤで、少し手綱を持ってみたら…痛いって! 明日のことを考え、持つのはやめて5分ほど常歩しただけで終わりにしておきました。

手入れついでに尻尾を洗い、たてがみも編むことにしました。虫を気にするグレイトに、虫よけオイルを塗りたくってから(スプレーは怖がってパニクるので)、たてがみを小分けにし、三つ編みを作ってお団子に結い上げます。右手の中指は使えないものの、薬指と小指があれば、あとは左手だけで意外となんとかなるもんだ。
グレイトは飽きっぽいから(たいがいの馬はそうだろうけど)、途中で気分転換をさせないとダメかなと思いながら編み始めましたが、思ったよりじーっとしています。話しかけてやったり、ときどきなでてやるくらいで充分。飽きると、わたしにぺたっとくっついてみたり、鼻先で洋服を探ってみたりするくらいで満足しているようです。
1時間弱で編み上げて馬房に戻すと、ぐーちゃんはすぐに寝転がってオガだらけにしてくれました。あーあ。

試合当日、朝7時にHRCからの馬運車が迎えに来てくれる予定です。6時半に日の出に着くと、もうNくん先生がグレイトを馬繋場につなぎ、輸送用に肢巻を巻いているところでした。
いっしょに運んでもらう荷物(手入れ道具や飼い桶など)を運んでいるうちに、馬運車が到着。O先生やKくん先生も起きてきて、倶楽部の入り口につけた馬運車のところまでNくん先生が引いていきます。
ぐーちゃんは馬運車の5mくらいそばまでは普通に歩いてくれたのですが、そこでビタッと立ち止まり、ゴネること10分。HRCの先生も辛抱強く付き合ってくれて、ようやくぐーちゃんを馬運車に乗せることができました。

馬運車を追いかけるようにして、Nくん先生の車でHRCへ。グレイトはちょうど馬運車から降ろされて入厩したところで、すぐに朝飼いを食べさせます。ぐーちゃんは食欲はバッチリあるようですが、周りの物音にいちいちビクつきながら食べているので、なかなか食べ終わりません。
グレイトは午後の2課目にしか出さないので、それまではとてつもなくヒマです。Nくん先生が先方の貸与馬で3課目Bに出るので、その馬付くらいしかやることがありません。

14時まえ、2課目の競技がようやく開始。まずNくん先生に先通しでグレイトで出場してもらい、続けてわたしが乗ることになっていて、Nくん先生の出番が13番目、わたしが23番目。グレイトはほぐれるのに時間のかかる馬だし(年寄りだからね)、けっこう物見するので、Nくん先生が早めに出して、常歩でじっくりほぐしてくれるそうです。
他馬の少ないポケット地点で常歩で横運動をしてくれているところを外から見ていると、グレイトが馬場に置いてあるハローを見まくってバタバタしています。さすがにNくん先生はそれ以上やらせないけど、わたしが乗っていたんじゃどこかにすっ飛んで行ってるかも。

Nくん先生の出番が近づいてきたので、待機馬場に張り付いて「あと何人」と出番を知らせます(こういう馬付の仕事、先方の貸与馬だったら先方の先生がやってくれるのですが、自分の馬を連れていくと自分でやらなければいけません。馬付をやってくれる人手がないのが、小さい倶楽部の痛いところ…)。
いよいよ出番になり、Nくん先生が捨てた鞭を拾って、そのまま入場門から見学。うわ、入場から物見してるよ。それでも真っすぐ歩かせるNくん先生はさすがですが、さらにC点からM点にいたる隅角でも(たぶん審判席を見て)止まりそうになってる。自分ひとりで出ていたら、あれは完全に止まられているだろうなぁ。
せっかく先通ししてもらうんだから、わたしはその効果を信じて堂々と乗るよりないんだ。

Nくん先生の演技が終了すると同時に、待機馬場をぐるりと回って(馬から見えない場所では走って)、馬繋場へ。大急ぎで鞍を乗せ換え、わたしは燕尾とハットを身につけて馬を引いていこうとしたとき、本馬場では落馬が起きてしまったようです。いかんいかん、動揺しちゃ。
騒ぎが収まってから待機馬場の入り口付近で騎乗し、Nくん先生といっしょに中へ入ります。とにかく、今日のわたしのテーマは、「しっかり歩け、空を見ろ」だと決めています。これは数日前に知った東国原知事の著書『ゆっくり歩け、空を見ろ』をもじったものですが、今さらあっちこっちと気にして馬をいじるより、ちゃんと歩かせることと、下を見ないことに専念するのがいいだろうなぁ、と思う気持ちにぴったりだったのです。

もうNくん先生がさんざんほぐしてくれているので、常歩は少しにしてすぐに速歩。いててて、やっぱり指痛いじゃん。それで最初は全然壁が作れず、グレイトがハミを受けるどころか上を向いてしまいました。
Nくん先生が「この際、短く持つより、ちょっとだけ長めに持って前に出した方がいいと思います」と言うので、ふだんの練習より2〜3センチ長めに手綱を持ち、拳は低めの位置で維持してみます。それでひたすら前に出し、地味に斜め横足や半巻きを入れていきます。
それでときどきハミを受けるようになってきたので、そろそろ駈歩を入れることにしました。先週は、駈歩でボンボン跳ねられて落馬したので、今日も跳ねるかなぁ。跳ねられても自分はかまわないけど、あんまり派手にやると周りがイヤがるだろうなぁ。
そんなことを考えつつ、できるだけ周囲に馬がいないときを見計らって駈歩発進。すると、ぐーちゃんはなんとなく跳ねたそうな素振りを見せたものの、普通に駈歩します。あれ? かえって拍子抜け。少し前進気勢が足りないと感じたので、あえて外方脚で蹴っ飛ばしたときにはさすがに跳ねましたが、それにしたって「ぽん」程度で、先週のような「ボン!」という強さはない。やっぱりアンタ、こういうところに来ると猫かぶるんだね。

Nくん先生が「あと3人です」などと言ってくれるのにあわせて、入場門近くに移動。ここまで来ると、グレイトがハミを受けてくれる時間も長めになってきました(逆を言えば、ちっとも安定したハミ受けになっていないということだけど)。
本番中に跳ねられてもイヤなので、今のうちに拍車を使っておこう。とくに右のトモがたまに遅れるので、意識して拍車をガツンと使ってみましたが、案外跳ねない。前進気勢もまぁ、わたしにしては悪くないほうだし、これなら回ってこられるな。
あと1人だな、と思って前の人馬に目をやると、もう出番のはずなのになぜか停止しています。さらに近くのインストラクターから、「棄権」という言葉がちらほら聞こえたような、聞こえないような。馬場の試合には珍しいことですが、まさか目の前で棄権?

「××さん、棄権でーす」とインストラクターが申し送るのが聞こえ、直前の人馬の棄権が確実になったので、入場門そばまで行って速歩で輪乗り。入場ベルが鳴る前に入場するほどテンパっちゃいないが、なかなかベルが鳴らないぞ。
ベルが鳴り、ついてきてくれているNくん先生に「もう1周する」と宣言して輪乗り。入場門に対してできるだけ遠くから直進できるラインを取ってから鞭を捨て、入場します。空を見よう、空を。
X点で停止、敬礼。ここは難なくこなせるぐーちゃんだけど、速歩発進大丈夫かな? お、大丈夫。さっきNくん先生が乗っていたときは、入場でもC点でも物見して止まりそうになっていたけど、さすがに先通ししてもらっただけはある。

斜め手前変換の中間速歩は、でも練習ほどは伸びません。最近はグレイトが経路を覚えていて、斜め手前変換では勝手に伸びてくれるほどだったんだけど、本番でそううまくはいかないか。
3湾曲の入りはわりといいと思いましたが、2湾曲目で蹄跡を1歩だけ踏むポイントで早く入りすぎてしまいました。このままじゃ蹄跡に触れられないじゃん、と思い、内方の拍車で馬のお尻を外に振らせたら、案外いいラインだったらしく、図形やポイントずれは取られずにすみました。
常歩パートに入り、F点で手綱を伸ばす直前に「見えないほうの拍車で蹴って、どんどん歩かせて」とNくん先生の声。演技中に返事するのはNGなので(ホントは声をかけるほうもNGだけど、そっちは他のインストラクターもやってるもーん)、聞こえている合図に視線は落とさずに笑ってみせ、手綱を伸ばしながら外方脚で軽く蹴りました。そのおかげで、今まで練習ではメタメタでリズムがないと言われていたパートなのに、けっこうしっかり前に出て、ジャッジも主審・副審ともに「6」をくれました。うれしい。

Hの手前で手綱を持ち直すと、案の定ぐーちゃんはハミから逃げて上を向こうとする。隅角で外方を持ちながら内方脚を押し込むと、少しはマシになりました。それはいいけど、C点で駈歩出せるのかい、わたし。
少し早めに発進しようとしたのですが、なんかやっぱり馬の反応が薄く、駈歩が出る気がしない。そこでつい、「シイッ」と駈歩の合図を使ってしまったみたい。みたい、というのはあまり記憶にないからで、ふだんのクセというのは恐ろしいものです。主審は見逃してくれたようですが、副審に「舌鼓使わない」と書かれてしまいました(公式競技なら失格もあるそうで…)。
しかも、発進と同時にグレイトがポンと跳ねました。ちょっとアンタ、待機馬場ではちっとも跳ねなかったくせに、今そうくるかい? しかも出た駈歩が全然前に出ず、外方脚で軽くはたいたらまた跳ねる。まぁ跳ねるとは言っても、強さも回数も先週落馬したときの半分程度なのでどうってことはないのですが、イレギュラーは取られるわな、こりゃ。

駈歩の輪乗りを開いて蹄跡に入り、斜めに手前を換えてXで速歩。うーん、1歩早いか?
C点から左手前の駈歩、こっちの手前はもともとそんなに跳ねられないんだけど、それでも何かの拍子に拍車が入ってしまうらしく、ピョコッと後肢が上がってきたりします。しかも前進気勢を全然作れず、トモの運びが悪くて、副審から「駈歩は3ビートです」と屈辱的なコメントを書かれてしまいました…。
斜め手前変換で速歩、蹄跡で常歩。もう少しだから、頼むよぐーちゃん。自分はひたすら空を見て、前へ前へ。C点で速歩を出し、蹄跡を回って半巻き乗り、G点まで直進、停止。
停止した瞬間に馬の体勢が整っていないと感じたので、脚で圧迫を続けながら拳をじっと保持。主審と目が合っている状態でこれをやるのは、ほんの1秒か2秒なのに、とても長く感じます。でも主審も待っていてくれたので、体勢を整えてから敬礼。手綱を伸ばし、ぐーちゃんの首をたたいたら、痛っ! 指のケガのこと、すっかり忘れてた…。

待機馬場を通り抜けて下馬すると、この競技が終わり次第、帰りの馬運車が出ることがわかりました。すぐぐーちゃんを厩舎に連れて行き、馬装を解いて肢巻としっぽ巻きをします。そこから馬運車が出るまで少しだけ時間がありそうだったので、ゆうべから結いっぱなしのたてがみをほどいてあげました。
馬運車が出る時間になり、今朝のイヤイヤっぷりを考えるとまた馬運車に乗らずに迷惑をかけるかなぁ、と思っていたら、意外とあっさり馬運車に乗ってくれました。これに乗ると帰れるということは理解してくれたんでしょうか。
ところが、馬運車の扉を閉めるなり、「ぶふふふぅ〜」と、いつものわたしを呼ぶ鳴き方。わたしの顔が見えなくなったとたんに不安になったのか、[早くいっしょに帰ろうよぅ]と言っていたのか、どっちでしょうね。

グレイトを送り出して、すぐに帰るつもりでいたら、Nくん先生がグレイトで出た2課目で入賞。表彰式まで出席して、日の出に戻ったらグレイトはもう馬房で夕飼いをもらっていました。食べ終わったところで馬繋場に出してみるとけっこう汗をかいていたので拭いて足回りの手入れをしましたが、N子先生に「今日は手入れもみっちりやらなくていいから、早く休ませてあげたほうがいい」と言われ、マッサージは軽めにしておきました。まぁぐーちゃん、よくがんばったよ、ホント。

ちなみにわたしの点数は51.18%。主審の総合観察で、「従順性(運動の調和、正しいはみ受け)」に「6」がついていたのが意外でした。あんだけ跳ねられといて、ねぇ。

ぐーちゃん編み込み
ぐーちゃんのたてがみを編んだ直後。


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