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(2005.5.14 八王子市・八王子乗馬倶楽部)
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アトラス、待機馬場
待機馬場にて駈歩。
さて今日は、八王子乗馬倶楽部で八王子市民大会に参加します。今回も貸与馬で出るのですが、前日にI野先生からお電話で、騎乗馬がアトラスに決まったという連絡をいただきました。それを聞いて思わず「アトラスぅ〜?!」と絶叫。だってアトラスと言えば、以前日の出の先輩Iさんが3課目を踏んで、ひとこと「重かった…」とつぶやいたような馬なのです。すかさずN子先生に連絡し、3センチの拍車を貸してもらうことにしました。
私の出場する2課目の開始時間は12時半ですが、朝イチで3課目に出場する人のビデオ撮影などのため、8時にHRCに到着。いや、自分の出番が来るまでが長かった(自分が乗りもしないのに朝から付き合ってくれたN子先生と相方にとっては、もっと長かっただろうな)。

私の出番は9番目で、アトラスは3番目にも出るので、その人の演技を観察。確かにいちいち重そうだし、毛色や体格もまるでうちのアルフォンスみたい。よし、あの馬はアルだ、そう信じこんで乗ろう。なにしろ私には3センチ拍車がついてる。「でも駈歩発進だけはあんまり拍車使わないほうがいいよ」とN子先生。「なんで?」「ばかねぇ、発進がC点じゃないの。審査員の目の前でやったら目立つでしょ」あ、ほんとだ。
「しかし受けさせにくそうな馬だねぇ…」そ、そうですか。アルなら案外顎を譲ってくるはずだったんだけどなぁ。譲らせようと悪戦苦闘するより、とりあえず前に出すしかないのか。

出番が終わったところで待機馬場の近くに行きます。鞍を乗せ代えるためにいったん馬繋場につながれたアトラスに視線を送っていると、優しそうな女性のD先生が私に気がついて「KYOKOさんですね? もう少ししたら準備できますから乗りましょう」と言ってくれました。
やがて準備ができたみたいなので、待機馬場のすぐ外で騎乗。常歩で待機馬場に入ります。すこし歩かせてみると、あれ、言われるほど重くないかも。少なくともアルフォンスに比べたらさくさく動くぞ。
「それじゃ速歩してみましょう。ちょっと反動が高いですけど頑張って」と言われ、脚で速歩を出そうとしましたが出ないので鞭をくれて前へ。あれ、しまった、鐙長すぎた。これじゃ全く鐙が踏めないし、軽速歩もできそうにない。速歩のままD先生のところへ戻り、馬を止めて「すみません、鐙に見栄張りすぎました」と申告して1穴詰めさせてもらいました。

気を取り直して速歩から軽速歩。アルフォンスほどじゃないとはいうものの、重い馬には違いない。ここでどんどん前に出しておかないと、本番で鞭を捨てたら全然動かなくなっちゃうと思い、軽速歩でばんばん鞭と拍車を使っていたら「ちょっと鞭使いすぎかな。鞭で動かしてたら、鞭捨てたときに動かせなくなっちゃいますよ」と注意されました。私の心づもりとしては、鞭と拍車を同時に使っておけば、拍車だけでも条件反射で動くようになるんじゃないかと思ったんですが、そういうもんでもないのか。
速歩に落としてみると、これは確かに先生の言うとおり、受けづらい反動。こんなに座れてないと、たぶん拳もガタガタ動いてるんだろうなぁ。座れてないくせにハミ受けなんて求められないや。

D先生の号令で常歩から駈歩へ移行。1発で出せなかったので、鞭をくれてから発進しなおすと出ました。駈歩だと案外乗りやすい感じがするのも、アルと同じか。
「少し手綱が短いかな。前が苦しそうなんで、もう少しだけ手綱長くして」HRCでは私の手綱は長いと言われることが多いので、逆に意識して持ちすぎていたみたいです。
このへんになると自分がいつもと違う3センチ拍車を履いていることはすっかり忘れてしまっていました。だものでついつい拍車で発進してしまっていたのか、駈歩の発進が急すぎるというような指摘を受けました。それならいつもグレイトでやっているようにやれば大丈夫だろうと思い(グレイトは拍車で発進すると跳ねるから)、半減却から座骨、ふくらはぎで発進。「そうです、今の発進いいですよ」なんだ、これで良かったのか。

そうこうするうちに2つ前の人の演技が終わったらしく、進行係から「KYOKOさん、待機してください」と声がかかりました。D先生とともに入場門に近い場所へ行き、そこで速歩の輪乗り。
輪乗りでの内方姿勢が悪かったので、ちょっと内方の手綱を自分の外方の肩に向けて控えてみました。すると今まで全然下がらなかったアトラスの頭がふっと下がりました。もしかして跳ねる前段階として首をもぐらせたのかと思いましたが、そうではなくて軽く屈撓しているらしい。「あ」「この15分くらいで、だいぶ手の内に入れましたね。いいですよ」完全なハミ受けができたとは言えないけど、なんとなくその形にもってくることはできたかな。
「馬場に入ると案外動く馬だから、鞭がなくても大丈夫。逆に速歩を伸ばそうとすると勘違いして駈歩出しちゃったりする子ですから、気を付けてくださいね」
1つ前の人の演技が始まったので、入場門そばの小さな待機馬場へ(ここには次に出る人だけが入ることになっています)。ここではもう、速歩で馬を前に出すことのみ。輪乗りで軽速歩しているとハミから逃げてしまいましたが、ここで無理にハミを受けさせてる余裕も技術もない。

軽速歩で動かしていると、ほどなく私の名前が呼ばれ、ベルが鳴りました。でも45秒は何しててもいいはずだし、だいたいまだ馬場の入り口開けてくれないし。
D先生から「そこのパイロンのところで鞭捨てましょう」と言われた場所で鞭を捨て、入場…しようと思いましたがオーバーラン気味で、このまま入るとXまで真直を保つのが難しそうだったので、もうひとまわり。
今度こそ真直に入れるラインをとり、A点から入場。実はここの印象が一番大事なんだよ、とつねづねO先生に言われているように、入場からX点まで脚を使い続けます。あれ、けっこうきちんと動いてくれるじゃん。いい感じ。X点で停止、敬礼すると、馬もお辞儀をするようにかくんと頭を下げました(どの馬でも似たような経験があるんですが、どうしてでしょうね。手綱と敬礼のときの私のバランスとかで馬がそうしたくなるんだろうか)。
速歩発進、これもよし。隅角を回ってM~X~K間の斜め手前変換は中間速歩。思いきって強めの脚を使うと、私の想像以上に歩度が伸びました。反動に負けてお尻が浮いてしまったくらいです。これくらいで座れない自分はダサいけど、馬だけ見ればこれはなかなかいい調子。

A点からの3湾曲は、なんだが馬が左を向きっぱなし。半減却と座骨、拳でかなり大げさに内方と外方を入れ替えてあげたつもりなのですが、全然ダメだなぁ。
蹄跡に入って、H点から中間速歩。さっきのM〜X〜K間の中間速歩がけっこう良かったので、あれくらい出したいなと思って脚を使うと、ぱっと駈歩が出てしまいました。しかもけっこうきちんと伸びた駈歩で、1完歩や2完歩では止められそうにない。体を起こして座り込み、座骨を無理矢理速歩のリズムにするのですが、まだ止められない。
スピードは中間駈歩程度なので「走られた!」という恐怖感は別になかったのですが、次の隅角までに止められるのか? という不安はあります。だって次の隅角までに止めないと、A点を通りすぎてしまったら次のジャッジ区間に入ってしまう。なんとかこの区間内でリカバーしたいよう。
隅角を回りきれずにラチを踏み越えるかもしれない(=失権)、とまで一瞬考えましたが、隅角の2完歩ほど手前でようやく速歩に落ちる兆しが。ちょっと微妙にA点を超えていましたが、常歩に落とすことができました。
まさしく、さっきD先生が「速歩で勘違いして駈歩出す」って言っていたとおりになってしまいました。もしかしたら拍車刺しちゃったのかもなぁ、と思ってもあとの祭り。

常歩でF点から斜め手前変換、手綱をのばします。ここはただ歩かせるだけじゃなくて、きちんと脚と座骨で前に出していかなければいけないけど、拍車を使うと速歩が出てしまうと常々言われている、案外難しいポイント。でも今の私は、さっき駈歩を出されたせいで、これ以上ミスしたくないという守りの気持ちに入ってしまっていて、脚が思いきって使えません。
メリハリのない常歩をしてしまったために、蹄跡に入ってからの中間常歩もイマイチでしたが、C点からの駈歩発進は一応大丈夫でした。輪乗りからC点で蹄跡に入り、隅角を拾って長蹄跡へ。長蹄跡ではM〜F間で中間駈歩なのですが、ここでの駈歩が全く伸びない。さっき出されちゃった駈歩のほうが、よっぽどいい駈歩だったぞ。
歩度が伸びなかったので、F点を超えても詰めることなど全く考えなかったのですが、隅角の寸前でほとんど速歩に落ちそうになってしまいました。ここは拍車を使うべきだろう。ギリギリ速歩に落ちる寸前になんとか食い止め、斜め手前変換、X点で速歩〜M点で常歩。M点まで速歩を持続させたかったのですが、1歩早かった。

常歩で次の隅角を拾おうとすると、隅角の2歩ほど手前で馬がパタッと前に進まなくなってしまいました。脚と座骨で前に出そうとすると、1歩だけ前に出ようとして[ひゃああ!]と馬が横っとび。なんだ?
その隅角のすぐ外には審査員席がわりのワンボックスカーが停めてあったのですが、普段は車を停めない場所。知らないものに正面から相対したアトラスが物見をしているようなのです。馬が前に出ないのならば、手綱を少し許して座骨で前に出すしかありませんが、そうやって蹄跡に入れても、やはり隅角の手前で止まってしまいます。
仕方ない、この際この隅角は捨てて、次のC点から駈歩に入ろう。そう思って馬をC点に向けると、ますます物見して馬が6歩も後退(普通の状態なら、やれと言っても一度に6歩も後退しない)。もとの隅角に向けようとしても、途中までは向かってくれるのですが、やっぱり途中でぴったり止まって後退を始めてしまいます。こういうとき私は前傾しやすいので、意識して肩を引くようにしていたつもりですが、もう万策尽きた。C点から入れなければどうせ経路違反、もう一度やり直しを指示されるはず。さっきも大きなミスを犯しているし、点数なんて期待するべくもないし。
競技進行の妨げにもなるし、と棄権を決意し、審査員席に向かってハットに手をやり、会釈。あ、これは障害式の略式敬礼だったと気がついてすぐに馬場式の敬礼をしなおすと、審査員席の大先生も答礼して、「そこ、開けてあげて」と馬場の外に出させてくれました。

馬場の外に出るところまでの間もかなりしぶしぶ歩くアトラスでしたが、D先生がすぐに馬の口を取りにきてくれました。「ちょっと…残念でしたね」「もしかして、もっと馬の口許しちゃえば良かったんですかね?」「そうなんですよ。馬場の外から言ってあげたくてしょうがなかったんだけど、そうもいかないし」
馬が物見したのは確かだけど、そのあとの自分の対処が最悪だった。もっと強気で前に出さなきゃいけなかったし、拳に力も入ってたんだろう。あとでビデオを見ると、物見をされてから何度か経路に戻そうとし、棄権するまでの時間はけっこう短いのです。自分の中ではかなり長時間じたばたした気でいたけど、まだあんなもんじゃなかった、まだできることはあった。諦めるのが早すぎた。
下馬してからN子先生に謝りに行くと、先生は私を責めることはしませんでしたが「また弱気の虫が出たね。あそこでもっと腰張ってれば前に出たんだよ」とだけ言われました。

アトラス、本番
M〜X〜K点間 斜め手前変換、中間速歩。
私にしてはよく伸びた速歩なんだけど、
お尻は浮くわ拳は浮くわ、つられて肘まで伸びてる。

アトラス、物見
「ぎゃあ」と横っ飛びした直後。
馬がめっちゃ馬場の外見てますね。


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