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(2005.9.9 北海道・遊馬ランドグラスホッパー)
278鞍目→
グラスホッパー
コースに入って5分でこれだもん。この先いったいどんな山道が!?

グラスホッパー
Uターン地点の小さな沢。

北海道旅行2日目、今日の行程の締めくくりはやはり外乗。せっかくなので今まで行ったことのないクラブで外乗をと、ネットで探したのが「遊馬ランド グラスホッパー」。ここはエンデュランスもやっているようなので、危険なことも少ないだろうと思って予約してみました。
(前日、ムラナカさんで教えてくれたところによると、グラスホッパーのオーナーはAERUの指導主任も兼任していて、オーナー夫人は獣医なんだとか。そりゃエンデュランスでも心強いわ。)

予約は17時からだったのですが、予定よりも早く16時すぎに着いてしまいました。まぁ馬のいるところでの待ち時間は苦にならないので、待たせてもらおうとクラブに入ってみました。
小さなクラブハウスと小さな放牧場。庭に丸太を何本か立てました、という感じのラフな馬繋場に、馬が4頭ばかり繋がれています。げ、思ったより馬でかいぞ。
車から降りると、馬装をしていた小柄な男性が挨拶してくれました。「ちょっと早く着いちゃったんですけど」と言うと、「それは全然かまわないですよ。おふたり、初級だと聞いてますけど」メール予約の時点では200鞍と言っておいたのですが(それでもサバ読んでますが)、まぁ500鞍までは初級だって言うし、台風の余波で悪路かもしれないし、外乗では何があるか分からないし、そういうことにしとくか。「とりあえず常歩と速歩で行きましょう」と言われたので、「まぁときどきは駈歩入れてもかまわないですけど」と伝えておきました。

スタッフは彼ひとりしかいないようで、待っている間、放牧地のそばに言ってミニチュアポニーたちを眺めていたら、「それ今年産まれたばっかりです。中に入って遊んでいいですよ」と言ってくれたので、放牧地に入ってみました。好奇心いっぱいのオスの仔馬と、興味はあるけどちょっと人見知りするらしいメスの仔馬がいて、それぞれの母親と思われる牝馬が2頭と、牡馬が1頭。
男の子のほうは、ヤギみたいに首に鈴をつけています。あれ、そういえば何かの本で、母馬の目が見えない場合は、仔馬の所在を知らせて安心させるために仔馬の首に鈴をつけると読んだような。母馬のうち、もくもくと投げ草を食べている1頭の目をよく見ると白く濁っていて、これはやっぱり見えないか弱視かのどっちかだな。でも触ってみても、動じる様子もありませんでした(いちおう声をかけてからゆっくり触ったけど)。

申込書に記入したりしているうち、馬の用意ができたようでスタッフさんに呼ばれました。小さな丸馬場に、馬装の済んだ馬が2頭ぼーっと立っています。「じゃあおふたりはこれに乗りましょう。トモミちゃんとミチルくんです。トモミちゃんは大きいけど女の子、ミチルくんはベテランのセン馬です。どっちがどっちでもいいですよ」ということ。なんとなく外乗のときはわたしが前、相方が後ろというのが暗黙の了解になっていて(そうでないと相方がはらはらするらしい…)、じゃあ牝馬のほうが後ろだろうと相方がトモちゃん、わたしがミチルくんに乗ることになりました。
まずわたしがミチルくんにまたがりますが、踏み台がないので鐙に足が届かない。鐙を伸ばして乗ろうとしたら、相方が足上げをしてくれました。芦毛のミチルくんは11歳だそうですが、またがってみるとわりとがっしりしたつくりで、でも太すぎず安定感のある体型。「ミチルくん(ミチルデューク)は競走馬でした。道営競馬で勝ったこともあります」げ、ってことはサラじゃん。

相方もトモちゃんに騎乗したので、先導の人馬の準備ができるまで「馬場の中を歩いてみてください」ということ。常歩で歩き始めると、なんだかぽてん、ぽてんと歩くので、ぎゅーっと脚を使ってみたら、はっと目を覚ましたようにとことこと歩き出しました。あ、思ったより脚扶助に反応いいな。でもどっかに行っちゃう感じではないか。
手綱は緩めに持っていたつもりでしたが、「外に出たら、手綱をもっと緩くして馬に足元見せて歩くようにしましょう」と注意を受けます。しばらく歩いて、「じゃあ馬場の外に出ましょう」って、馬場の入り口にかけてあった横木は完全には外されてなくて、片端が地面に落とされているだけなんですけど、これをまたいで出るっつーことですよねぇ。
跳ぶなよ、跳ぶなよぅ、と思いながら横木の一番低いところに向けたら、みごとにのんびりとまたいでくれました。

丸馬場の外で馬を立ち止まって待っていると、スタッフさんが馬繋場に繋がれていた黒くてスマートな体型の馬に近づきました。その子はさっきから、繋がれたままうとうとしては前肢をかくっとさせ、自分で膝カックンになっていたぽーっとしたタイプの子。「この馬はロンリーウルフです。眠り病にかかっていますけど(笑)、実はサンデーサイレンスの子どもです。今日はぼくが乗ってみます」げっ!? 気性がきついことで有名なサンデーサイレンス参駒なのに、このおとなしさは一体なに!?
「こういう環境で放牧しっぱなしなんで、うちの馬たちはストレスが少ないんですよ」

先導のスタッフさんの後ろについて、いよいよ外乗へ。まずは馬繋場のすぐ隣に広がっていた草原に常歩で出ます。草原の中の道で、「ここでちょっと速歩してみましょう」と、先導について速歩。脚をむぎゅーと使ってみたのですが、むしろ前の馬に引っ張られてすぐ速歩になった感じ。
わ、パワーあるなぁこの馬。持っていかれそうな力強い速歩。こういうときとっさに手綱を持ちそうになるのですが、馬のほうは先導馬を抜く気がないようなので、手綱を引っ張らないように気をつけて走らせます。
思ったより反動が大きいな、やわらかいけど。最初は軽速歩でしたが、先導の人が2ポイント気味で乗っているのを見て、上り勾配で自分も2ポイント気味に乗ってみたら、こっちのほうが反動受けやすいかも。
勾配を上りきったところで「どうですか?」と聞かれたので、「パワーありますねー」と答えると、「ミチルくんはこの間のエンデュランスで、40km完走しましたからね」ということ。しかもベスト・コンディションドホース(完走後の獣医検査で、回復状態がもっとも良かった馬)に輝いたそうです。

クラブの入り口からすぐに、山道に入ります。この山道が、ハンパじゃなく山道なんです。道幅は馬の幅程度しかなく、けっこう木の枝が張り出していたりするので(左の写真で一番上の状態)、片手で枝を払ったりしながら進みます。手袋はしているけど、ゴーグルも必要だったな、今日は。
突然スタッフさんが、「ホ〜ゥホゥッ」というような鋭く高い声を発します。「山に入る前に、奇声を発して合図しておきます」と、そのあとも何度か同じ声を出していました。詩的に言うと、山に挨拶してるって感じなんですが、まぁ山に住む鹿などの生き物に[これから通るからね]という警告を発したというのが本当のところではないでしょうか。
「じゃあここから山に入りましょう」と言われ、ここってどこよ? とよく見ると、ほそーい脇道が。そこに入るのもけっこうな下り傾斜で、「もう少し手綱伸ばしてあげたほうがいいかな」とスタッフさんの指示。これでもけっこう伸ばしているつもりだったんですが、下りは手綱持たないくらいの気持ちでいくか。
(余談:わたし今まで、下りは手綱を持って馬を起こしてあげたほうがいいのだと思い込んでいました。馬の違いなのかもしれないけど、どっちがいいんでしょうね?)

登り坂に出て、速歩を出していきますが、一番うしろのトモちゃんがついてきません。相方は障害やっているからわたしより馬を前に出せると思うんだけど、それでもあの重さって、わたしが乗ってたら確実に動かないな。
カーブを超え、後ろに相方とトモちゃんの姿が見えなくなってしまったので、先導の人に知らせて常歩に落とします。カーブなどで前の馬が見えなくなってしまうと、後続の馬は慌てて走ったりして危険なものなのですが、トモちゃんは前の馬の姿が見えなくてもゆ〜っくりゆ〜っくり歩いてきたみたい。
待っている間、スタッフさんが「鞭が必要だったかな?」とつぶやき、そこらへんの枝を折って葉を払っています。相方が追いついてきたところで、その手作りの鞭を渡し、「持っているだけで違いますから」と速歩を始めると、確かに鞭の効果は抜群だったらしい。今度はトモちゃんがぴったり後ろについてくるようになったので、ときどきミチルくんが[オレの後ろにくっつくなー]と耳を絞っていました。ミチルくん、それって女の子のやることだよ。

道幅の狭い林の中、上り坂が続きます。速歩で行っているのですが、ミチルくんは速歩で上っていると疲れるのか、自分で勝手に駈歩になったりする。登り坂の駈歩なのでぶっとぶわけではなく、前の馬を抜くわけでもないので、そのまま控え気味の駈歩で走らせます。先導の人に「駈歩になっちゃいますね」と言うと、「ここはいつもトレーニングのときに『がんばれがんばれ』って追うところだから、頑張らなきゃって馬が思って駈歩になっちゃうんですよね」だそうです。
それはいいんだけどミチルくん、前にいるロンリーくんが邪魔だからって噛みつくのやめようよ。本気で噛みに行っているわけではないようですが、たぶんミチルくんのほうがストライドが大きいのでロンリーくんのお尻にくっつくようになってしまい、[邪魔だなおまえー]と威嚇しているだけみたい。ロンリーくんはどうも気が弱いみたいで、歯を立てられても蹴ることもできないらしい。

長い登り坂を抜けると、ちょっと道幅の広いところに出ました。…が、そこはかなり急な下り坂。20mくらいえんえんと続く坂の傾斜角は25〜30度くらいありそう(目測なので分かりませんが)。「ここ下ります。下がけっこうぬかるんでいますが、馬は四輪駆動だから大丈夫です」って言われても〜。昨日ホースガーデンMURANAKAで降りた土手と同じくらいの角度に思えますが、昨日の坂は3mもなかったし、馬体を横にして降りたし。だいたいわたし、高所恐怖症なんだけど。
でも先導のスタッフさんがまっすぐ降りはじめたので、外乗の場合は前の馬に取り残されたほうが危険なんだ、そうなんだ、と自分に言い聞かせてあとについて1歩ずつ坂を降ります。坂を降りる場合は上体を起こすのがセオリーですが、この角度だと起こすなんてもんじゃない、馬の上に寝るような感じ。
最初に言われたとおりに手綱は伸ばして馬の判断に任せ、自分はひたすら馬の邪魔をしないように、でも止まりそうになったら脚を使って前に出して行きます。ふと、エンデュランスで有名な増井光子氏が、下り坂では鞍の後橋をつかむと言っていたのを思い出し、同じようにしてみました。あ、確かに安定感(安心感かも)あるなぁ。

そこを通り抜けたあとも、そこまで急坂ではないものの下り坂が続きます。鞍の後橋をつかむほどではありませんが上体は起こしっぱなしで、あした腹筋が筋肉痛になりそうだわ。
下りきったところに、小さな沢がありました。「ここでUターンします。水飲むようなら飲ませてもいいですよ」ということなので、手綱を伸ばして立ち止まらせてみますが、ミチルくんは飲まないみたい。
そこからUターンして、軽い登り坂になります。でも来たのとは違う道を行っているようで(方向音痴なのでよく分からない)、わりと緩めの道が続きます。ちょっと草原のようになっているところに出て、「いつもここで休憩させているので、草食べさせてあげてください」ということで、手綱を伸ばして休憩。ここでスタッフさんがデジカメで記念写真を撮ってくれたりしました。

帰り道の途中、視界が開けて日高山脈が見事に見えるところがありました。富士山のような姿をしているのが羊蹄山、別名蝦夷富士。ここから山をひとつ越えたあたりには、白い厩舎と広い放牧場、細長い覆い馬場(おそらく坂路)があり、「あれがビッグレッドファーム(マイネル・コスモの冠号がつく競走馬を持つ岡田繁幸氏の牧場)です。たぶんコスモバルクもあそこで練習してたはず」と、スタッフさん。やっぱりコスモバルクって北海道の期待の星なんだなぁ。
クラブハウスの見えるところまで帰ってくると、「あ、出てる」とスタッフさん。何が? と見ると、外乗に出る前に丸馬場で放牧しておいたはずの2頭が、丸馬場から脱走して、道ばたの草を食べているのでした。ま、脱走しても5mと離れていないところにいるのが偉いけどね。
スタッフさんが先に下馬して、「そのままちょっと待っててくださいねー」とロンリーくんをつなぎ、脱走した2頭を捕まえに行きました。2頭は別に逃げるでもなく、[ちぇー]と言いたそうな顔をしながらも素直に捕まっていました(笑)。

下馬したときにふとみると、先導していたロンリーくんの左目からぽろっと涙が零れて地面に落ちました。ひー、そんなにミチルくんが噛みに来たのが怖かったの?
スタッフさんによると、実はこのクラブで一番強いのはトモミちゃんで、女ボスなんだそうなんですが、そのトモミちゃんに唯一逆らえるのがミチルくんだそう。で、まだ新参者のロンリーくんは、ここで一番強い2頭に後ろから威圧感を与えられていたわけだ。そりゃ泣くわ…(いや、たぶん目にゴミが入ったとか、そんな理由だと思うんですけどね)。
スタッフさんが馬の手入れをしている間(思わずいつものクセで手伝いそうになったら、「そんなことしなくて大丈夫ですよ」と言われてしまった。そういえばビジターだった。)、放牧場でポニーたちをかまって遊ばせてもらいました。相方と追いかけっこをして遊んでいた牡の仔馬が、しまいに本気になっていた(笑)。

日も暮れかけてきたので、ここでおいとま。なかなかハードなコースで、わたしたちとしては楽しめたのですが、これは誰にでもオススメできるわけではないなぁ。ちょっと難易度高めです。ま、初心者ですと言えば初心者用のコースがあるんだと思いますけどね。

グラスホッパー
先導を勤めたロンリーくんの目から、ぽろりと涙が…。

グラスホッパー
相方の後ろをついてまわるミニチュアポニーの仔馬。かわいすぎ〜〜。


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