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(2001.7.28 千葉・オリンピッククラブ)
19鞍目↓
クロスのアップ
クロスオーバー、競走馬名はカネイチトウショウ。S58年4月18日生まれ
オリンピッククラブには豊島区に予約センターというものがあります。
そこに電話して騎乗の予約をしますが、一人おじさんの係員がいて、この人が出ると必ず、
「たかしなと申しますが」
「たかしまさんね」
「たかしです」
「はい、たかしまさんね」
「た・か・し・な・です、なにぬねののな!」
「たかしまさん?どんな字を書くの?」
ちょっと耳遠いんじゃないの?と毎回イライラさせられるのです。そりゃ確かに珍名だけど、会員番号で分かるようなシステムとかはないんかい、せっかく予約センター作ってるんだから。
「7月28日の午前の部で」
「午前の部、ないですよ」
「は?」
「夏時間だからね、午前の部なんかないよ。」
「えっ、じゃあ何時からですか」
「何時って、3時からの一回だけですよ、7月19日から夏時間だから。別途ナイター料金として500円追加になりますよっ」
そんな話は聞いてないよ!と、このおじさんに言っても無駄そうなので、素直に15時からの騎乗予約をして電話を切りましたが、それって7月19日〜9月2日(クラブカレンダーで夏時間を確認した)までは、自動的に500円追加課金されるってことですよね。
馬が暑さに弱いことを考えると、夏時間を設けるってのは分かりますけど、15時からってもしかして一番暑い時間なのでは?午前中の方がまだマシな気がする。

当日は、連日の猛暑がうそのように涼しい日で、乗馬日和。
秋葉原でバスに乗り込みながらも、なんだかもうオリンピッククラブでの乗馬が大して楽しみじゃない自分に気がついてしまった。
とりあえずあと2日なので、それをさっさとこなして日の出乗馬倶楽部に行きたいな、というのが正直なところ。

クラブに着いて、今日の騎乗予定を確認。
今日の騎乗馬はクロスオーバー、騎乗予定は1〜4鞍のうち、1鞍目と3鞍目。
2鞍目と3鞍目の間に、30分の休憩時間が入っています。なるほど、これが夏時間というものなのね。
1鞍目は16時からで、15時20分から馬装を始めるように指示がありました。

時間がきたので、馬房に馬を迎えに行きます。クロスオーバーは鹿毛の牡馬。以前うちの相方が乗ったことがあるので見知ってはいましたが、乗るのは初めて。
無口頭絡と引き手(紐)を持って、馬房の扉越しにクロスオーバーのおでこをなでて挨拶をします。
(余談ですが、この数日前に、テレビでアメリカの名伯楽モンティ・ロバーツさんの調教を見て、ちょっと影響されてしまいました。馬に恐怖を与えず、馬に仲間あるいはボスとして認めさせるというのが要点。ロバーツさんは、馬に接するときにまずおでこから馬体をなでて、馬に挨拶をするのです)
ところがクロスは、足下の青草をずーっと食べ続けている。仕方がないので青草を拾い、名前を呼んで差し出すと、それは食べるのですがまたすぐ足下の草を食べる。
そのままでは無口がかけられないので、扉を開けて馬房の中に入り、無口をかけようとすると、クロスは噛みついてくる。おでこはなでさせるのに…
何度か噛まれそうになりながら格闘してると、スタッフさんが「大丈夫ですか?」と声をかけてきました。
ちょっと前の私なら「すみません、手伝ってください」と言うところですが、もうそろそろそれではいけないと思い、「なんとかやってみます」と言ってしまいました。
しばらく格闘し、スタッフさんが見かねて手を出そうとしたときに、ようやく無口をかけさせてくれました。くそぅ、遊んでたな。

馬房から出して蹄洗場に繋ぎ、馬体の手入れをするためブラシと鉄爪を持ってクロスのところに戻ります。
とりあえずおでこをなでると、いい子にしてるようだったので、馬をつないである鎖をくぐって蹄洗場の中に入ろうとすると、
「うわっ!」
いきなりクロスが、前脚で蹴り上げようとしてきたのです。当たらなかったけど。
他の馬の手入れをしていたスタッフさんがこっちを見て、
「そうそう、クロスってそうやって威嚇するんですよ。今度クロスが蹴ってきたら、叩いてみましょうか。ばしっと。」
なるほど、ナメられてはいけないらしい。ばしっとね。
再度チャレンジすると、やっぱり蹴ってくるので(2〜3回当たった)、ばしっと足の付け根を叩いたりしてるうちに、だんだん蹴らなくなってきました。それを見計らってブラシかけをはじめると、なぁんだ、おとなしく出来るじゃん。

向かい側の蹄洗場に馬を入れた相方の馬もずいぶん騒いでいて、手こずっていたみたい。スタッフさんが言うには、「このクラスで一番うるさい2頭なんですよ。逆に言えば、こいつら経験しとけば他は大丈夫ですから」
やったろうじゃないのよ。

ブラシを終わって、鉄爪を持ち出し、ツメの裏掘りをしようとすると、また激しく蹴りがはじまりました。さすがに前脚はスタッフさんが見かねてやってくれましたが、後ろ脚のときに「やってみますか?」と言われたのでチャレンジ。少し蹴りそうな仕草はするものの、後ろは割と蹴らないで裏掘りをさせてくれました。
後ろ脚よりも前脚が危ないなんて、めずらしい馬だ。

鞍を乗せ、腹帯を締めるときにちょっと蹴りそうになりましたが、ハミは素直にかけさせてくれました。頭絡がうまく耳にかからず(首を下げてくれないと届かないのよぅ)、耳をへんなふうに倒したまま入れてしまい、正しい位置に入れ直すのに苦労したのですが、それはおとなしく我慢していました。
「ごめんごめん、私が悪かったよ、下手くそでごめんよぅ」とか言いながら頭絡を締めていると、スタッフさんが笑いながら
「クロス今のはそんなに気にしてないんで、大丈夫ですよ」と言っていました。
にぶいんだか繊細なんだか、よく分からない馬だ。

時間が来たので、馬場に引き出して、引いたまま1周し、馬を停止させて騎乗。
騎乗はほとんど問題がないんですが、歩き出すとこの馬、歩様がだらだらなのです。元気がないというよりは、「しょーがねーなー」という感じの歩き方。
仕方ないので脚で腹を締めるのですが、それでもうまく歩いてくれない。なめてるな。

さて部班でレッスン。今日の指導員はM先生、この方に習うのは初めてです。
今日は7騎で、クロスオーバーは1番騎。夏時間でクラスがいつもの半分の鞍数しかないから、頭数が増えるのは仕方ないですね。
一番騎で周回を始めますが、クロスはただでさえだらだらと歩いているので、コーナーに来ると止まりそうになる。脚を締めたり、蹴ったりしてやっと動き出しますが、次のコーナーでまた止まりそうになる。
「動きの悪い馬は、一歩ごとに脚を使ってください。きゅっ、きゅってね」
クロスの場合、ずっと脚を使ってないといけないことになります。いい加減、脚が痛くなってきた…
「高階さん、ちょっとガチガチ。やわらかくね」
脚にばかり意識をとられて、また手綱にしがみつく感じになってしまっていたらしい。

「斜めに手前を変え」で馬場に斜めに入っていき、それまでと反対周りになるように蹄跡に出ますが、クロス、内方脚を締めて手綱を開いても曲がらな〜い!
「もっと開いて、もっと開いて」という指示で、一生懸命手綱を曲がる方向に開くのですが、結局曲がりきれず、蹄跡に戻ってしまいました。
「じゃあもう一度やりましょう。曲がるときは、内側の脚で押して、手綱を開くだけでなくて、人間のほうも曲がる方向に体を持っていきましょう」
そうか、自分のバランスね。これは自転車と同じ。鞍の左右に分散させてる自分の体重を、外側の体重を内側に持ってくるような感じで、おお、曲がった!

「では軽速歩行きましょう。脚を使って歩度を詰めていきますが、脚はね、包み込むような感じで、きゅっと持ち上げるつもりで」
なるほど、下から馬の腹を持ち上げるつもりで…するとあんなにだらだらだったクロスの歩様が元気良くなり、首を上げ下げして走る体勢になってる。一蹴りすると、速歩が出るではないですか。簡単に。

しかしコーナーになると、クロスはやっぱり止まる。コーナーを曲がることに気をとられて、たぶん私の脚が入っていないんでしょうけどね。
「高階さん、速歩はうまく出せてますけど、前傾になってます。肩を引いて」
また手綱にしがみついてしまった…
結局軽速歩を1周つづけることができないまま、1鞍目は終了。
「バランスが悪いからじゃん」と相方に指摘され、
「次は2周走ってやる〜!」と低い目標を立てたのでした。


19鞍目・丁々発止
(2001.7.28 千葉・オリンピッククラブ)
20〜21鞍目→
馬房内のクロス
1鞍目で前傾になってしまったのは、プロテクティブベストの背中が少し長めで(いや、私が小さくて)鞍に当たってしまうのも一因なのだ、と言い訳をしてベスト着用を中止。オリンピックではいけないことになってるけど、日の出ではベストなんてもともとなかったし。

本日のレッスン4鞍のうち、2鞍目と3鞍目の間には30分の休憩があったことは前述の通りですが、その間馬たちは蹄洗場に、鞍だけゆるめて繋がれています。
3鞍目の時間が近づいてきたので、蹄洗場のクロスをかまいながら待機していると、S先生が声をかけてきました。
「どうでした、クロスは?」
「もー、歩かないし曲がらないし蹴られるし、完全になめられてます」
「がんこじじいだからねー(笑)」
そういえばさっき、M先生も「クロじい!」とか「おじいさん」とか言ってたなぁ。
「けっこうなお年なんですか?」
「16か17くらいかしらねぇ」
「あ、でもママより下なんだ(たまたま隣の蹄洗場にママがいた)」
「でもあっちにもっとすごい馬がいますよ、20歳越えてるかな」
先週行った日の出乗馬倶楽部では、毎日乗ってる馬は寿命が短いのだと教えてくれました。日の出で死に目にあったフェニックスは享年30歳でしたが、自馬だったので毎日は乗っていなかったから長生きしたのだとか。

さて今日の2鞍目、指導員はF先生。
鐙を下ろしたりして騎乗の準備をしていると、クロスが私の服の背中をあむあむしていたずらをしてきました。元気なじいさんだこと。
1鞍目の最後で、クロスへの脚の使い方がちょっと分かったので、今回は歩くのがスムーズです。

さて軽速歩。今度は前傾にならないように気をつけて…すると脚がおろそかになってしまうのか、やっぱりコーナーでスピードが落ちる。そこで速歩をやめないように、脚を締めるとなんとか速歩に戻れました。
おっ、この調子なら2周はいけるぞ。

ある程度走り続けられるようになった時、F先生の指示がありました。
「じゃあ一番騎、軽速歩のまま斜めに手前を変え。次の次の角で入って」
コーナーで手綱を開くも、クロスは曲がらないばかりか速度を落としてしまいます。
「高階さん、手綱を外に持っていこうと思っちゃだめですよ。曲がるときはね、手綱を開くというよりも、くっと手前に引くの。じゃあ軽速歩からもう一度やりましょうか」
おや、1鞍目のM先生が言うことと微妙に違うな。

軽速歩からやり直し、コーナー前で手綱を引くようにすると、今度は軽速歩のまま曲がれましたが、その直後に止まってしまいました。カーブのつもりで出している扶助が、クロスにはストップと受け止められてしまったのでしょう…
「曲がるときの手綱は、小刻みに何度も使うといいです。曲がりたい所のちょっと前から、くっ、くっ、くって」
一番騎の私が止まってしまうと、後続も続かないということはあったでしょうが、一番騎に乗ったおかげで何だか個人レッスンのようになってしまいました。

最後にはなんとか、「軽速歩のまま斜めに手前を変え」ができるようになり、部班の最後尾に追いついてしまいました。
レッスンが終わって、下馬してからクロスに「なんだよー、けっこう走るじゃん」と鼻をこすってやったら、鼻面を私の胸にこすりつけてきました。

私と交代で4鞍目に乗る人は、このコース一日目の女性で、私の騎乗を見学していたらしく
「私、止まるのが大変だったんですけど、綺麗に止まれますね」
「あ、この子は止まるのは楽ですよ。どっちかというと走らせる方が難しかったですね」
そういえば自分も1日目のときはそんなんだったかもなぁ…と、話している間も、クロスは私の背中をあむあむして遊んでいる。

自分たちが1日目のときもそうでしたが、彼らはまだ馬装解除を習っていないので、4鞍目が終わる頃には戻って、馬上げと馬装解除をやるように指示がありました。
4鞍目が終わった彼女とクロスのところに行き、鐙上げや手綱での馬の引き方などを教えながら蹄洗場に連れて行くところまでやってもらいました。自分も最初は教えてもらったわけだし。

彼女は馬装解除講習が別の場所であるので、そちらの方に行ってもらい、いざ一人でクロスの馬装解除。
ハミ頭絡を外し、無口をかけようとすると、クロスは首をあっちにやったりこっちでいたずらをしたりして、なかなか無口をかけさせてくれない。無理矢理かけたけど。
鞍を外し、馬体にブラシをかけると、クロスはあくびをしたりしています。よしよし、かなりリラックスしてるじゃないの。馬装のときみたいな危険はないだろう。

ブラシかけを終え、ひづめの裏掘りをしようと鉄爪を持って戻り、蹄洗場の鎖をくぐった瞬間、クロスがいきなり前脚で蹴ってきた!
「クロス、何すんの!鉄爪刺さったら危ないでしょ!」
飛び退くことができたのでクロスも私も大丈夫でしたが、びっくりしました。さっきまであんなに甘えてきてたのに。
鉄爪を後ろ手に持ち替え、おでこから鼻をなででもういちどなだめ、蹄洗場の鎖をくぐる。よし、今度は大丈夫。
クロスの左前脚に手を出すと、またすごい勢いで蹴ってきました。
「いてっ!」
今度はクロスの前膝が肩に当たってしまいました。すかさずばしっと叩く。
同じことを何度もやりましたが、結局だめで、裏掘りはスタッフさんが見かねてやってくれました。

裏掘りが終わると、ホースの水とタワシで足の裏を洗ってやるのですが、ここでも格闘。
これも最終的にはスタッフさんが手を出してました。
「あとは大丈夫だと思いますよ」と言われ、水に濡れた脚をふくためにタオルを持ってきます。
タオルを濡らして、軽く顔を拭いてやると、気持ちよさそうにおとなしくしている。とても同じ馬とは思えない…
蹄洗場に入り、タオルで脚を拭いてやり、ついでに馬体も軽く拭く間、まったく蹴るそぶりも見せませんでした。

思うに彼はかなり賢い馬で、脚を持ち上げられることにとても不快感を持っているので、鉄爪を見た瞬間に蹴りが入っちゃったのでしょう。昔なにかあったのかもしれないしね。

顔から耳を拭いてやっているとき、F先生が近くにやってきて、
「クロス、今日はずいぶんおとなしいじゃないの」
「これでおとなしいんですかぁ?蹴り入りましたよ」
「でも今おとなしいよね」
足回り以外は、彼とコミュニケーションがとれたからだと思いたいな。ふふ。

手入れを終えて、クロスを馬房に連れて行くのに使う引き手(綱)を探し、ずいぶんごついのしかなかったんだけど、それを借りてクロスを蹄洗場から引き出します。
そのとき、近くにいた先生が「すごいですね、調馬策ですか」
引き手と思って持ってきたのは、実は調馬策(馬の訓練のとき、馬をつないだまま走らせる長い紐)だったのです。
「ひゃー、これ調馬策ですか!どうりで長いと思った」
仕方がないのでそのまま、調馬策で馬房まで連れて行きました。
クロスを馬房にいれて、無口をはずしておしまい。朝は期待が薄かったのに、けっこう充実した一日でした。

ずっと脚を使いっぱなしだったおかげで、翌日は内股が筋肉痛でした(笑)
きっとクロスは、私に脚を意識することを教えてくれたのだ。きっとそうだ。

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